仕事の範囲
一般に労働者は労働契約を結ぶことによって、その契約の内容に対して業務命令権を受けることとなります。
労働契約で定められた仕事を命令されることに(よほどの内容的逸脱がなければ)異議は唱えられません。
一方で労働契約に定められた業務とは、概要であり概説でありそして概念であることも確かです。
毎日8時間の労働の中で行う仕事を契約にすべて網羅することは不可能でしょう。
ゆえに使用者の命令権は当該契約の趣旨に合っている限り幅広く解釈されます。
たとえば内勤事務員に対して「表計算ソフトでグラフを作って下さい」という命令は労働契約上にわざわざ明記してなくても、当たり前のように行われるでしょう。
それに対して異議を唱える労働者も少ないと思います。
一方で「表計算ソフトを使うんだったらついでにパソコンのレジストリを最適化しておいて欲しい」という内容だったらどうでしょう。
この労働者がパソコンの一定の知識を持っていることが自明であれば、これもそれほど問題のないことのように思えます。
以上を業務遂行上の必要と呼ぶのですが、業務命令権はそれに沿っている限り正当であると認められます。
このように堅苦しく考えなくても普段の仕事の中で「ついでにこれもやるか」という意識で処理する案件は山ほど有るでしょうし、それらが労働契約に書かれているか否かをわざわざ鑑みるのも滑稽かも知れません。
では・・・
「ついでに終わったらたまにはお茶くみも頼むよ」と言われたらどうでしょう?
パソコンの処理とお茶くみには業務遂行上の因果関係はありません。
しかしお茶くみくらいやってくれるでしょう?という暗黙の了解が職場に存在していた場合これも恒常的に行われるような気がします。
しかしもしその内勤事務員がお茶くみをしたことがなく、かつ、採用はパソコンを使った事務処理という合意の基で契約が行われていたとしたら少し事情は異なりますよね。
この仮の話に対して、どのように考えるか(受け止めるか)は人それぞれだと思います。
当事者の意志、事業内容、上司と部下、男性と女性、勤続年数や個々人の性格などなど・・・
さまざまな要因を考えて総合的に判断するバランス感覚は大切でしょう。
何でもかんでも法律では小回りのきかない堅苦しい職場になってしまいますし、一方でなんでかんでもその場の空気で指示命令を行っていたらやはりそこには大きな陥穽も生じます。
人事に答えはないという言葉は一理ありますが、だからこそ話し合いを重ねて理解を高める「答え合わせ」も行わなくてはならない状況が多々あるように思えます。
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